地元広報誌「うえまち」コラム連載中!もし、我が子が不登校になったら?

第51回

相談事例㉗ 「通信制高校へ転校はしたのですが?」

 不登校による出席日数不足は高校生にとっては深刻です。復学に向けて家庭や学校がともに取り組んだとしても、生徒の欠席日数が規定を超えれば、復学を待たずして留年が確定し、故に休学や転校、さらには退学などの決断が迫られてしまいます。同学年の友達と同じ時期に卒業したいと言う想いは、通信制高校への転校の決意を促す結果に繋がります。

 中学3年の三学期から不登校のA君は、なんとか希望通り全日制高校に進学しましたが、1学期途中から不登校になり9月末に留年が確定し、通信制高校へ転校しました。週1~2日の登校で単位取得ができるのですから、親御さんはなんとか通ってくれるものと強い期待があったようです。しかし、A君は登校日に体調不良を訴えたり、自宅を出ても実際には登校していないなどの日々が続きました。

 転校は確かに新たな生活の始まりです。しかし、本人はやむなく転校したので納得はしていないのです。「よし!通信制高校で頑張るぞ!」と意欲的な気持ちではなく、むしろ「全日制で失敗した」と言う思いが強く、「こんなはずじゃなかった!」と挫折感を抱えたまま新たな生活を始めているのです。それでも、なんとか通学を続けるのは「もう、これ以上失敗できない!」というプライドなのかも知れません。

 しかし、親御さんの明るい応援も受けながら通信制高校の生活に少し馴染み始めると表情も和らいできます。授業やレポート指導を受けながら、まず「これでなんとか高校は卒業できると」と見通しを持ち安心感を抱きます。さらに、先生との何気ない会話や同級生と少し話したりできるようになれば、心の中に「今の生活でいい!」「しんどくなくなってきた」などの思いが生まれ、今の自分を肯定できる状況『今の自分でいい!』を感じ始めるのです。つまり、まだ小さいですが「自信」が育ち始めます。前回の連載でも触れましたが、これが次への行動の意欲と繋がり、本当の意味での新たな生活がスタートします。
A君が自ら意欲的に通うようになるまで、半年の期間が必要でした。「週1~2日登校」だから通えるようになるわけではありません。過度な期待はかけず、ゆっくり明るく応援してあげてください。通信制高校への転校を、不登校克服へのたしかなきっかけとしたいものです。

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