2011/7/13

室長の拙稿、朝日新聞7/8「私の視点」欄に掲載!

 日常の仕事に関する問題点を整理した内容です。
 タイトルは「通信制高校・・・基礎学力向上のプランを」です。掲載された拙稿を、そのまま転記します。

 全国の高校生の数は減少傾向にあるが、通信制高校生は増え、学校基本調査によると約18万8千人にのぼっている。だが、卒業が目的化するあまり、基礎学力が身についていない生徒の増加が問題になっている。
 通信制高校は戦後の学制改革の際、仕事などで通学できない人が勉学する場として設置された。自学自習が基本だ。しかし、現在では、いじめなどで不登校になったり、学習上でさまざまな困難を抱えていたりして、高校卒業が難しい生徒が多く入学する。
 私が勤務する通信制高校は、小泉内閣の構造改革特区制度でできた株式会社立である。三重県伊賀市の本校で年間28時間の授業(スクーリング)を受け、あとはリポート提出やテレビ、インターネットによる学習などを行う。だが、自力でリポートを仕上げられない生徒も多く、生徒達たちは大阪、東京など30ヵ所にあるサポートセンターに週数日、通って個別指導などを受けている。
 塾と提携して生徒の勉学を支援している高校もある。それでも、学校教育の基本である確かな基礎学力をつけるという点では、歴然とした限界が存在するのである。
 その主な原因は、教職員が生徒をサポートセンターに通学させるなど生活習慣の改善に日々、追われて、学習面の指導はリポート作成が精いっぱいだからである。卒業に必要な単位の取得を重視して、基礎学力の保証は置き去りにされていると言っても過言ではない。国の私学助成が期待できない株式会社立学校にとっては、生徒を卒業させることは経営上も不可欠なのである。
同様の悩みを抱える教職員と交流したいが、通信制高校の教職員が参加できる研修会や民間サークルはきわめて少ない。とくに株式会社立は他校と競合関係にあり、学校間の交流は難しい。
 そこで、株式会社立高校が加盟する学校設置会社連盟は、現実の問題点を把握し、教職員が学校を超えて実践の交流をし、力量を育てる場を提供してほしい。また、教育委員会などは積極的に学力向上に向けたプランをつくり、その具体化を各校に促すべきである。同時に、通信制高校の教職員が、研究サークルなどを立ち上げるなどの主体的な活動に踏み出すよう呼びかけたい。
 いじめが原因で全日制から通信制へ転入し、今春、卒業した女生徒は「学ぶ場があって本当によかった」と喜びをかみしめていた。すべての生徒が名実ともに高校卒業にふさわしい、未来を切り開く力を身につけてほしいと願う。

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